平成30年度 各会計決算特別委員会第一分科会

令和元年10月28日(月)、平成三十年度各会計決算特別委員会にて、質疑を行いました。

■災害対応に関して

1.復興支援対策部の決算額の内訳について

○菅野委員

 私からも、まず災害対応に関する質問からさせていただきたいと思います。
 さきの台風十五号、そして十九号、また台風二十一号の影響による先日の大雨によって、都内のみならずかなり広い範囲で、東北地方から中部地方まで、広い範囲で甚大な被害を受けたということで、被災された皆様方には心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 そして、被害の全容もいまだ明らかにはならない状況であります。そして、まさに今、懸命な生活の復旧に向けて努力をされている、皆様方もこうして全員が防災服で対応されているという状況の中でありますが、一日も早い復旧、復興を願っております。
 その上で、今回のこうした自然災害、台風を中心とした災害によって、ようやく復興の兆しが、復興の目標達成が間もなくといわれていた東北地方においても、東日本大震災で被災された、そうした地域においても、再び大きな自然災害に見舞われてしまったわけであります。
 今回、我々--今行われているラグビーのワールドカップがそうです、釜石で試合が行われたのも、まさに復興のシンボルとして、釜石の復興を世界に発信しようというようなことで試合を行ったわけですし、これから来年、二〇二〇年の大会を目指している我々も、まさに復興五輪としての大きな役割があって、そうしたところが、まさに道が見えてきた、兆しが見えてきたやさきの避難生活というような、大変悲しい結果に今、なっているところであります。
 そこで、きょうは、そうした被災地支援の取り組みについて伺っていきたいと思います。
 特に、東日本大震災における被災地の復興支援について、きょうは決算の審議でありますので、伺っていきたいなと思っています。
 このテーマについては、震災発生以降、議会でも幾度となく取り上げてきましたが、決算特別委員会の場で、事業費をベースにした質疑は余り行われていなかったように思います。そこで、今回は事業費の観点からお尋ねします。
 決算資料によりますと、被災地の復興を担う復興支援対策部の三十年度の決算額は、総額で約八千九百万円となっています。総務局の決算規模からすると決して大きな額ではありませんが、被災地への職員派遣や各種イベント、都内避難者への支援など、多岐にわたる非常に大きな取り組みであります。ただ、決算資料からは、具体的な取り組みとその事業費が見えにくいと思います。
 そこでまず、復興支援対策部の決算額八千九百万円の内訳を、主な事業ごとにお示しいただきたいと思います。

○伊東復興支援対策部長復興支援調整担当部長被災地支援福島県事務所長兼務

 平成三十年度の復興支援対策部における事業費決算の内訳は、風化防止や風評被害の払拭などを目的とした動画作成やイベント開催などの取り組みに約三千万円、被災地との連絡調整や都から被災地に派遣されている職員の支援などを目的に福島県及び宮城県に設置している現地事務所の運営に約二千二百万円、相談拠点の運営など被災地から都内に避難されている方々の支援に約千五百万円となっております。

2.動画作成やイベントについての具体的な内容と事業費について

○菅野委員

 今いただいたご答弁からも、部事業全体の全体像を把握できましたが、同時に、事業費で見ると、現在の復興支援の中心が動画作成やイベントの開催にあるともいえるのではないかという印象も持ちました。
 動画作成やイベントの開催は、小池知事になってから特に、あらゆる局で予算をかけているようにも感じています。都庁の各局各部、至るところでそうしたことが行われていて、そのため、現在の都政のトレンドともいうべき手法であるかのように見受けられますが、私はその効果について少し問題意識を持っています。
 そこで、少し掘り下げてお尋ねしたいと思います。
 まず、平成三十年度に復興支援対策部が取り組んだ動画作成やイベントについて、具体的な内容と事業費について伺いたいと思います。

○伊東復興支援対策部長復興支援調整担当部長被災地支援福島県事務所長兼務

 平成三十年度は、風化防止や風評被害の払拭などの観点から、三つの事業に取り組んでまいりました。
 初めに、海外に居住する外国人に対し、復興に取り組む被災地の人々の姿を発信する動画を、岩手編、宮城編、福島編、それぞれ複数言語で作成しており、その事業費は約一千六百万円でございます。
 次に、青森、岩手、宮城、福島の四県と都の共催で、被災地の今を伝え、震災の風化防止と支援の継続を呼びかけるイベント、復興応援・復興フォーラムを開催しており、その事業費は約千二百万円でございます。
 また、福島県産品と観光に対する風評被害の払拭を目的とする福島産直市を初めとするふくしま東京キャンペーンを展開しており、その事業費は約百八十万円でございます。

3.海外向け動画や風化防止イベントの効果について

○菅野委員

 今ご説明いただいた三つの事業のうち、海外向け動画の作成、そして復興応援・復興フォーラムが大変大きな予算を使っている、その中の予算の割合が大きいと思います。この動画とイベントだけで、部の総事業費の約三割を占めています。果たして効果がどれぐらい出たのか、ここでしっかり確認したいと思います。
 それでは、海外向け動画や風化防止のイベントはどのような効果があったのでしょうか。伺いたいと思います。

○伊東復興支援対策部長復興支援調整担当部長被災地支援福島県事務所長兼務

 海外向け動画は、昨年十二月の公開以来、十月二十三日現在で、三県分合わせて五十万回を超える視聴回数を記録しており、動画を通じて、世界中の多くの方々に被災地の今を知っていただいたと考えております。
 また、復興応援・復興フォーラムは、四千五百人の方々にご来場いただき、被災地の今に直接触れていただけたことに加え、イベントの企画や準備などを通じ、共催した東北四県との連携体制も一層強まったと考えております。

■大規模災害における帰宅困難者対策について

○菅野委員

 こうした被災地の支援、復興支援という取り組みの大きな意義というか、目的の中には、本来、風化防止、そして風評払拭に向けた事業の効果というものが求められると思います。
 そこで、動画を見た方、そしてそうしたイベントに参加した方が実際に起こした具体的な行動や、被災地の実体経済に与えた影響などで、そうした効果というのは本来はかられるべきじゃないかなと私は思います。ある意味、その回数、視聴回数というのはその前提にすぎない。動画の視聴回数やイベントの参加人数を物差しにすることだけでは、いささか疑問を感じています。
 ただ、そうはいっても、五十万人もの人が動画を視聴している、そうした事実、そしてイベントを通じて強めた被災地の皆さんとのきずなというのは、これは一定の評価に値するのではないかと考えます。
 また、事業費は小さいですけれども、福島県産品を直接販売する産直市、また、福島に直接お金を落とす意義のある、そうしたイベントというのは大切だと思います。
 いずれにしろ、支援のあり方について、事業効果の把握の方法を含めて、ぜひ今後とも不断の検証、そして見直しを行いながら、引き続き被災地の支援、被災地を支えていただく、そうした取り組みを続けてほしいと要望いたします。
 ところで、国が定めた東日本大震災の復興・創生期間が来年度で終了いたします。また、都としては、来年度に復興五輪、さっき私が申し上げた復興五輪を控えています。来年度は、被災地の復興にとっても、それを支援する東京都にとっても、大きな節目の一年になるといってもいいと思います。
 しかし、その後、都の支援が急速に下火になるということを非常に心配しています。都においては、計画上の年度などに過度にとらわれることなく、復興の進捗や被災地のニーズを踏まえて、特に今回のようなことがあると、被災地もさらにさらに復興に時間がかかる、また再び大変なことになっているということにもなりますので、ぜひそうした復興進捗、被災地のニーズを踏まえて、支援のあり方をしっかりと検討してほしいと思います。このことを強く要望して、次の質問に移ります。
 次に、首都直下地震などにおける帰宅困難者対策に関して伺いたいと思います。
 東京都の被害想定では、首都直下地震が発生した際には、約五百十七万人に及ぶ帰宅困難者が発生するとしていますが、そのうち九十二万人が、会社や学校などの居場所がない、すなわち行き場のない帰宅困難者としています。このことが大きな問題であると思います。
 この九十二万人の行き場のない帰宅困難者については、一時滞在施設の確保を進めていると聞いておりますけれども、確保数は決して充足していないと認識しています。
 こうした状況の中で、九十二万人にも及ぶ行き場のない方を想定以上に増加させないためには、勤めている会社であるとか、学校であるとかにとどまっていただく、そして一斉帰宅の抑制をしてもらう、そうした取り組みが大変重要と考えます。
 そこで、平成三十年度の、都の一斉帰宅の抑制についての取り組みと今後の対策をお聞かせいただきたいと思います。

○榎園防災対策担当部長

 都はこれまで、東京都帰宅困難者対策条例を制定し、一斉帰宅の抑制などの対策を推進してまいりました。
 平成三十年度は、従業員の一斉帰宅の抑制に積極的に取り組む企業等を認定する制度を創設し、初めて四十九社を認定いたしました。また、経営者向けに、従業員が帰宅困難となった際にとるべき行動や、一斉帰宅抑制の重要性を解説する動画を作成いたしました。
 さらに、今年度は、認定企業のすぐれた取り組みをまとめた事例集を作成し、イベント等で配布を始めました。
 今後は、これらのツールを活用しながら、企業等で構成される駅前滞留者対策協議会や都主催の帰宅困難者対策フォーラムなど、さまざまな場を通じ、広く企業や都民に対し、一斉帰宅抑制の普及啓発を図り、協力企業の拡大に向け、取り組んでまいります。

■島しょ地域のブランド化について

1.平成三十年度の取り組みについて

○菅野委員

 今お話しいただいたように、一斉帰宅の抑制の取り組みというのは、企業そして都民の理解と協力が不可欠であります。ですから、さまざまな機会を通じて協力を仰いでいかなければならないと思います。
 特に、企業でいえば中小企業や零細企業はなかなか、まだまだそうした認識が周知徹底していないようにも思います。まだ、今だったら帰れるんじゃないかとか、例えば、地震がおさまったから家に帰った方がいいんじゃないかとかというようなことで、会社から出してしまうというか、帰してしまうというようなことで、実際に駅に着いたら鉄道は動いていない、途中の道路は崩壊をしていて、どこに行ったらいいんだろうというようなケースというのは、やはり考えられます。
 今回はケースは違いますが、今回の台風のような場合でも、あれだけ来るぞ来るぞと、危険だ危険だといわれていながらも、まだそういった対応をしている方も見受けられました。ちょっとそれは違いますけれども、そういったことがあります。
 ですから、ぜひ従業員の方に、そして学生さんとかにもちゃんとご自分がいるところに安心してとどまれるように、備蓄や環境整備などの対応とあわせて、そうした認識をしっかりと植えつけてもらう、そうしたことの取り組みを進めていただきたいと思います。
 九十二万人というのは大きな数ですし、まだその部分が非常に難しいところでありますけれども、ぜひ、企業等の自助として一斉帰宅の抑制に取り組んでいただけるよう、都はこのことに継続的かつしっかりと取り組んでいただきたいと思います。これは要望して、次の質問に移ります。
 次に、島しょ地域のブランド化についてお聞きします。
 都は、島しょの魅力再発見として、ブランド化に向けた取り組みとして、東京宝島事業に取り組んできました。
 都はこれまでも、ほかにも島しょ振興や活性化に向けたさまざまな事業を進めてきたと思いますが、このブランド化を目指した事業について、平成三十年度はどう取り組んできたのか伺いたいと思います。

○石橋多摩島しょ振興担当部長大島災害復興対策担当部長事業調整担当部長兼務

 東京宝島事業は、これまでの手法から脱却した新たな発想の選択と集中による取り組みが必要との、民間の専門家の方からの提言に基づき、島しょ地域のブランド化を目指す事業であり、平成三十年度から開始したものでございます。
 ブランド化に当たっては、現地の理解と主体性が重要となることから、まず、取り組みの基礎となる島の個性を掘り起こし、切磋琢磨する仕組みづくりとして、現地の意欲ある事業者で構成する島会議を、大島、神津島、三宅島、八丈島の四島で開催いたしました。専門家の支援を受けながら、島民の方々が主体となって、島のすばらしい景観、特産品、文化などの個性の磨き上げと、将来を見据えた活発な議論が行われました。
 また、特産品のブランド化に向けたモデル事業として、利島のツバキ油、青ヶ島の焼酎を選択し、新商品の開発、販路開拓に向け支援を開始いたしました。
 こうした取り組みに加え、イベントの開催等により、各島の取り組みや魅力の発信と、今後のビジネスマッチングのきっかけづくりを行うなど、島しょ地域の認知拡大に向けた取り組みを実施いたしました。

2.今後どのように東京宝島事業に取り組んでいくのか

○菅野委員

 民間の専門家の提言に基づいて、さまざまな取り組みを行ったということはわかりました。
 しかし、こういったものはそうなんですが、どんな取り組みを行っても、実際に肌で感じるような成果が出なければ、単にその事業を受託した業者の利益になるだけであります。
 利島のツバキ油、それから青ヶ島の焼酎はいいんですが、それももちろんそうですが、別にこの事業をやる前から非常に人気商品でもあります。有名な商品であります。ブランド化には、そういった意味では、もちろん話はいろいろ聞いたんでしょうけれども、島の方々の意見を今以上にしっかりと聞きながら、事業に取り組む必要があると感じています。
 そこで、平成三十年度の取り組みを踏まえて、今後どのように東京宝島事業に取り組んでいくのか伺います。

○石橋多摩島しょ振興担当部長大島災害復興対策担当部長事業調整担当部長兼務

 ブランド化の実現には、現地を主体とした継続的な取り組みが必要でございます。
 今年度は、昨年度の四島に続き、残る七島でも島会議を開催し、島の事業者によるブランド化に向けた議論を支援するとともに、昨年度島会議を実施した四島においても、各島の実情や要望に応じ、引き続き現地の主体的な取り組みを後押しいたします。
 また、島しょの特産品のブランド化に向けたモデル事業に継続して取り組むとともに、イベントや各種媒体等を活用した島の魅力発信を行ってまいります。
 島しょ地域の町村を初めとする地元関係者との連携を図りながら、島しょ地域のブランド化に向けた取り組みを継続的に進め、魅力と活力にあふれた東京の島々の実現につなげてまいります。

○菅野委員

 私、この事業を別に批判しているわけでも何でもありません。大変いい宣伝もされているし、東京宝島という発想もいいと思います。
 ただ、この事業は知事査定で、それまでは計画に特になかったものが、知事査定で急遽採用されたというふうに伺っています。
 先ほど冒頭に申し上げたように、これまでも都は、島しょ支援、島しょの活性化、島しょの振興、さまざまな形で、こういった商品のPRだとかも含めて行ってきているわけであります。そこに、今度新たに東京宝島という名称、それからブランド化という印象、こうした話題づくりは確かに成功したと思いますが、であるがゆえに、それに終わって、簡単にいうと、せっかくいい事業をやるのであれば中途半端に事業を終わらせることのないように、そして何といっても島の方々が成果を実感できるように、継続してしっかりと取り組んでいただきたい、そのことを要望して、質問を終わりたいと思います。
 以上です。

【都議会リポート】
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/special-accountiong/2019-17.html