平成30年度 各会計決算特別委員会第一分科会

令和元年10月18日(金)、東京都議会 平成30年度決算特別委員会にて、EMP(エマージング・マネージャーズ・プログラム)、島しょ地域における超高速ブロードバンドサービスの整備状況についてについて質疑を行いました。

■EMP(エマージング・マネージャー・プログラム)について

1.都がEMPを支援する必要性、意義について

○菅野委員

 私からも、今の斉藤委員の東京版EMPに関連──まあ、同じような質問になるんですけれども、伺いたいと思います。
 まず、今開催されているラグビーワールドカップ、そして来年の二〇二〇オリンピック・パラリンピック大会に向けて、世界中が今東京に注目をしているわけであります。そして、海外から訪都外国人の数が非常に増加を続け、東京の都市ランキングも世界第三位ということで、今そういった立場にはあるわけです。
 一方で、先ほども増田委員のお話もありましたけれども、東京の国際金融都市としてのステータスというのは、徐々に低下をしてきているといわれています。アジアの中でも、かつては非常に優位性があったんですが、今はそのアジアの中でも優位性が低下している。国際金融都市のランキングである国際金融センターインデックスでは、東京は香港、シンガポール、上海よりも下位の六位に甘んじているという状況であります。
 そうした状況を受け、都では、アジアナンバーワンの国際金融都市を目指して、おととし国際金融都市東京構想を発表しております。
 その中で、東京市場に参加するプレーヤーの育成を施策の一つに掲げて、東京版EMPファンド創設に係る補助金制度など、エマージング・マネジャーといわれる新興資産運用業者の育成に関する具体的なアクションを行ってきているということであります。
 そこでまず、改めて都がEMPを支援する必要性、意義について何なのかお伺いしたいと思います。

◯小川戦略事業担当部長

 海外では、次世代の資産運用業者の発掘、育成や運用先の多様化という目的で新興資産運用業者に運用資金を拠出するEMP、エマージング・マネジャーズ・プログラムが推進されております。しかし、日本ではEMPが導入されていないため、海外で行われているEMPを参考にしつつ、国内機関投資家にEMPの活用を促進するインセンティブを付与することで、東京版EMPの導入に取り組むことといたしました。
 東京版EMPの導入によって、資産運用業の裾野を広げて業者間の競争を活性化することによって、資金を預ける都民やリスクマネーの供給を受ける都内中小企業などがメリットを受けられる環境を創出してまいります。

2.EMPを普及させるために都がこの間行った取り組みについて

○菅野委員

 都がEMPを直接支援するという意義は理解できるんですが、先ほどの斉藤委員のお話じゃないですけど、この事業の執行率という点を見ますと、平成三十年度において、運営事業者の一社が東京版EMPを導入し、新興資産運用業者への投資は実際に行われたと先ほども答弁がありました。しかしながら、補助金の支給がなかったようであります。
 制度の目的の一つである国内機関投資家からの投資がなかったことが、恐らく理由であったようですが、そこで、東京版EMPについて補助金支給に至らなかった背景、そして、EMPを普及させるために都がこの間行った取り組みについて伺いたいと思います。

◯小川戦略事業担当部長

 平成三十年度につきましては、東京版EMPファンドを通じて新興資産運用業者への投資が行われましたが、運用資金の拠出が補助金の支給対象外である海外機関投資家であったため、補助金を執行することができなかったと、こういうものでございます。
 その背景でございますが、国内機関投資家は、過去の運用実績を重視するケースが多うございまして、新興資産運用業者に運用資金を拠出するのは難しいためと、こう考えております。そのため、都では、EMPの認知度向上を図るべく、EMPへの資金の出し手となる国内機関投資家などにセミナーを開催するなど、EMP導入の必要性を発信して啓蒙活動を行ってまいりました。
 今後も引き続き、国内機関投資家に対してはEMP導入の働きかけを行ってまいります。

3.取り組みにより、都民や都内中小業者には具体的にどのようなメリットがあるのか

○菅野委員

 補助金の支給には至らなかった背景、これはおおむね大体そうだろうなということで理解はできているわけですが、やはり、せっかくこれだけの制度をつくるわけですから、構築する上での見きわめが少し甘かったのではないかというふうにいわざるを得ません。
 その上で、この補助金制度の創設や都のアナウンスメント効果によって、東京版EMPの導入と新興資産運用業者への運用資金の拠出を実現したことについては、評価できるものと考えます。
 東京版EMPのように、新興資産運用業者を育成することは重要な取り組みであると考えますが、対象が、ものづくりなどを行う事業会社ではなくて資産運用会社という、一般の都民には余りなじみのない業態であることから、都事業として都民や都内中小企業へのメリットがわかりにくいと思います。
 そこで、東京版EMPの導入など、新興資産運用業者を育成する取り組みにより、都民や都内中小業者には具体的にどのようなメリットがあるのかお伺いしたいと思います。

◯小川戦略事業担当部長

 新興資産運用業者を育成することで、資産運用業者が増加しまして、都民により魅力的な運用商品が提供されて選択肢が広がると、こういうメリットがございます。
 さらに、国の進める貯蓄から投資への流れを後押ししまして、都民の健全な資産形成への寄与も期待できます。
 都内の中小企業にとっては、特に設備投資など、前向きな資金需要に際して、銀行借り入れ以外にも出資の形で資金供給を受けられるというような形になりまして、資金調達の選択肢が広がると、こういったものと見込んでおります。

■島しょ地域における超高速ブロードバンドサービスの整備状況について

1.五村六島における超高速ブロードバンドサービスの整備の進捗状況について

○菅野委員

 新興資産運用業者を育成して、今ご答弁いただいたような、さまざまメリットがあるわけですが、それを着実に生むためにも、もう一つは、お金をしっかりと回すというか、さっきのお話じゃないですけど、たんす預金じゃないけど、そういったものをしっかりと市場に出してもらう。そのためにも、制度の目的の一つである、国内機関投資家からの資金をしっかりと取り込んでいけるかが重要だと思います。
 そのためにも、国内投資家たちにこの制度がもっと響く、そのことが必要じゃないかと思います。
 ちょっと残念ながら、昨年度に比べ、この補助金支給に係る今年度の予算については減額をされております。
 多分執行率が低かったとか、なかったということで、そういうことであろうかと思いますが、この制度自体は、先ほどの斉藤委員のお話じゃないですけど、やはり重要な制度だと思いますし、しっかりと取り組んでいただきたいという気持ちからも、制度をさらに推し進めるために、今後も引き続き、海外だけではなくて、国内の機関投資家からの投資が行われるように、啓蒙活動などさらに工夫をして、一層尽力をしてほしいと思います。そのことを要望して、次の質問に移りたいと思います。
 次に、島しょの超高速ブロードバンドサービスの整備状況について伺いたいと思います。
 我が党は、島しょ地域における情報通信格差を是正するために、光ファイバーケーブルが敷設されていない地域である伊豆諸島の利島村、新島村、神津島村、御蔵島村及び青ヶ島村の五村六島への整備を速やかに進めることを、政策提言の一つとしてこれまで掲げてきました。そして、提言の実現に向けて、これまで都に対して超高速ブロードバンドの早期整備実現を強く訴えるとともに、国に対して財政支援を求める緊急要望などを実施し、財源の確保にも精力的に取り組んでまいりました。
 こうした活動が実を結んで、国の平成二十七年度補正予算において補助財源が確保され、平成二十八年度より海底光ファイバーケーブル整備工事が始まったところであります。
 昨年の本分科会で、我が党の大場委員の質問に対し、平成二十九年七月から神津島、御蔵島、平成三十年六月からは新島、式根島において、超高速ブロードバンドサービスの提供が開始されたとの答弁がありました。
 また、利島、青ヶ島においても、海底光ケーブルの整備を進めているとの答弁もいただいております。
 そこで、まず五村六島における超高速ブロードバンドサービスの整備の進捗状況について伺いたいと思います。

◯戸井崎ICT推進部長

 今お話がありましたとおり、神津島、御蔵島、新島及び式根島では、既に超高速ブロードバンドサービスを提供しております。また、利島では平成二十九年度から、青ヶ島では平成三十年度から整備に着手しております。
 しかし、利島及び御蔵島におきましては、昨年の九月、台風二十四号の接近によりまして被害が発生したために、被害状況の確認等再発防止に向けた検証を実施いたしました。
 このため、御蔵島においては復旧工事を行うとともに、利島においては工事予算の事故繰越を行ったところでございます。

2.台風の被害状況を踏まえた対策と今後の対応について

○菅野委員

 今答弁があったとおり、昨年の台風二十四号により被災をして、利島での工事がおくれているとのことであります。また、先週の台風十九号においても、NTTの海底光ケーブルが故障し、新島、式根島、神津島では、インターネットや携帯電話がつながりにくくなった状況になり、十五日には復旧したと聞いています。
 光ファイバーケーブルが断線するということは、島民生活に多大なる影響を与えるとともに、その影響は島への旅行など、島外にまで及ぶものであります。
 いうならば、光ファイバーケーブルは今や、水や電気などと同様に、島しょ生活や地域産業を支える重要なライフラインであります。
 そこで、昨年の台風二十四号の被害の状況を踏まえた対策と今後の対応を伺いたいと思います。

◯戸井崎ICT推進部長

 台風第二十四号による被害内容は、台風を起因とした転石により、海底から陸上へのケーブル陸揚げ区間におきまして、ケーブル防護管が損傷し、利島では断線が発生いたしました。
 この台風被害を踏まえまして、利島及び青ヶ島につきましては、台風の影響を受けない工法で施工していくことといたしました。
 具体的には、海底地下部を掘削しケーブルを通す工法へと変更をして、地盤の状況を慎重に確認しながら工事を進めてまいります。
 引き続き、災害に強い安定した通信環境の実現に向け、努めてまいります。

○菅野委員

 我が党の島しょ出身の三宅正彦議員のスローガンは、島は東京の宝であります。今後、ADSL回線が光アクセス回線に切りかえられていく中で、島しょの光ファイバーケーブルは、一般島民にとって極めて重要な通信手段となります。
 残る利島、青ヶ島についても、可能な限り早期に整備を図り、伊豆諸島五村六島の情報通信格差是正を確実になし遂げることを強く要望して、質問を終わります。

【都議会リポート】
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/special-accountiong/2019-11.html