平成28年 オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会(11月18日)

オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会

平成二十八年十一月十八日(金曜日)
第四委員会室
午後二時四十五分開議

平成28年11月18日、オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会にて、会場施設の変更案に関連して質問いたしました。


■オリ・パラ調査チームとオリ・パラ準備局の体制について

1.オリンピック・パラリンピック調査チームの体制

〇菅野委員

 それでは、質問をさせていただきます。
 まず、前回の委員会で、都政改革本部のオリンピック・パラリンピック調査チームの報告書についての報告がありました。そこでは、海の森水上競技場、オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナの三つの施設について変更案が示されました。二〇二〇年大会の競技会場については、東京の招致決定後、議会においても多くの議論を重ねてきたところです。
 大会開催まで四年を切り、大会準備に残された時間は決して多くありません。今は大会の成功を見据えて、関係者と緊密に連携し、これまでの議論や調整の経緯を踏まえながら、必要な取り組みを確実に遂行し、前に進んでいかなければならない時期です。特に施設の整備は後戻りできません。そうしたタイミングで、あえて会場の見直しを行うのであれば、短期間であるとはいえ、慎重かつ丁寧に調査検討を行わなければならないと思います。
 そうした問題意識から、今回、都の検討案となった選択肢と、これまでの各競技会場に関する検討内容などについて質問していきたいと思います。
 まずは、報告書の内容を理解する前提として、調査チームのこの間の検討について、幾つかの事実を確認していきたいと思います。
 まず、都政改革本部の調査チームでは、競技会場の見直しに関する検討はどのような体制で行ったのか。特に、チームの中には建築や土木の具体的実務や、オリンピック、そしてパラリンピックの情報に精通した顧問などはいらしたのかお伺いしたいと思います。

○小笠原総務局都政改革担当部長

 オリンピック・パラリンピック調査チームによる新規恒久三施設の検討に当たりましては、上山特別顧問が全体の取りまとめ役を担っております。
 三施設については、町田特別参与、安川特別参与及び本多特別調査員の三名が、それぞれ分担して調査検討を行っております。
 また、一級建築士の資格を有している宇田特別顧問が、コストやレガシーの観点から検討に参加しているほか、他の特別顧問等にも必要に応じて調査検討に加わっていただいております。
 オリンピック・パラリンピック関係の情報につきましては、調査の過程で関係者へのヒアリングや資料の提供等を通じて、必要な情報を収集しております。

〇菅野委員

 今、調査メンバーのお名前を伺いました。あらかじめ特別顧問の方の簡単な経歴などは伺っておいたんですが、そういう意味では、本当にスペシャリストなのかどうかというのは、若干、ちょっと私は素人なりには疑問に思うところであります。

2.オリンピック・パラリンピック準備局の体制

〇菅野委員

 それではもう一方、オリンピック・パラリンピック準備局においては、これまで会場計画の検討を行ってきた際に、どのような体制で取り組んだのかお聞きしたいと思います。

○根本オリンピック・パラリンピック準備局大会施設部長

 会場計画の再検討を開始いたしました平成二十六年度のオリンピック・パラリンピック準備局の体制といたしましては、会場計画再検討に直接携わる職員は二十二人、うち土木職、建築職などの技術系の職員は十四人でございました。
 その後、平成二十七年度は、職員三十四人、うち技術系の職員十八人、平成二十八年度は職員四十人、うち技術系の職員十八人の体制で会場計画の検討を進めてございます。

〇菅野委員

 調査チームはさっき伺ったんですが、中心メンバーは五人の体制、そして、オリ・パラ準備局は、今のお話ですと約二十人から四十人、そして、その半分程度は技術系の職員であるということを伺いました。

■競技会場の見直しに関する、調査、意見交換、選定について

1.調査報告書の作成にかけた期間

〇菅野委員

 それで、人数はわかりましたので、次に、検討した期間についても確認しておきたいと思います。
 オリ・パラ調査チームは、調査報告書を作成するに当たり、どれぐらいの期間、どの程度の時間を費やしてきたのかお伺いしたいと思います。

○小笠原総務局都政改革担当部長

 九月二十九日の第二回都政改革本部会議に提出された調査報告書については、九月一日の調査チーム発足以降、担当局や関係団体から延べ十八回、約五十時間のヒアリングや新規恒久三施設の建設予定地等への現地調査などを経て、おおむね一カ月で作成しております。
 また、十一月一日の第三回都政改革本部会議で公表された調査報告書につきましては、九月二十九日の報告書の提言を踏まえ、引き続き調査チームが担当局や関係団体から延べ三十三回、約五十時間のヒアリングや、宮城県長沼ボート場への現地視察などを経て作成しております。

2.競技会場の選定にかけた期間

〇菅野委員

 おおむね一カ月ぐらいでということでありますけれども、それでは比較する意味でも、オリ・パラ準備局は、これまで競技会場の選定についてどれぐらい期間をかけてきたのかお伺いしたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局競技・渉外担当部長

 平成二十六年六月に知事が会場計画再検討を表明し、ユース・プラザ・アリーナA、B、若洲オリンピックマリーナの三つの恒設施設の建設中止を含む会場の見直しを検討してまいりました。
 代替会場の選定に当たりましては、組織委員会と連携し、IFとともに代替会場の視察や議論を重ね、IOCとも十分に情報を共有し、都、組織委員会、IF、IOCの四者で共通認識を持てるよう、丁寧に調整を重ねてまいりました。
 平成二十七年六月までには、自転車競技とサッカーを除く二十六競技の会場がIOCに承認され、会場計画全体の見直しにめどがついたところでございます。
 また、会場が確定した後も、その詳細を検討するに当たりましては、レイアウトの変更など、アスリートファーストを前提としながら、いかにコストダウンを図っていくか、IFやIOCと協議し、残された競技の会場とともに調整を継続しております。
 これらの会場計画の検討には、これまで二年以上の期間を費やしております。

〇菅野委員

 今、二年以上ということと、答弁の中で、平成二十六年から再検討を知事が表明したというところからのお話がありましたけれども、実際にはそれより以前から、さまざまな角度で競技会場については検討されてきたと認識をしています。

3.事前の現地調査の概要

〇菅野委員

 そういうことで、それぞれの検討期間が明らかになったわけでございますが、その意味で、今度は検討の中身についても確認をしておきたいと思います。
 まず、競技会場を選定するには、施設の内容はもちろんですけれども、その立地や周辺の状況などについても詳細に確認することが不可欠だと思います。報告書を作成するに当たって、オリ・パラ調査チームは、誰がどの程度事前の現地調査を行ったのか伺いたいと思います。

○小笠原総務局都政改革担当部長

 報告書の作成に当たっては、新規恒久三施設に関する調査の一環として、九月八日にオリンピック・パラリンピック調査チームの上山特別顧問、坂根特別顧問、町田特別参与、安川特別参与、本多特別調査員の五人に加え、須田特別顧問及び飯塚特別顧問の計七人で、三施設の建設予定地及び辰巳国際水泳場への現地調査を行っております。
 また、宮城県長沼ボート場については、十月十五日に小池知事の視察に同行する形で、上山特別顧問及び安川特別参与が現地調査を実施しております。

〇菅野委員

 では、オリ・パラ準備局は、これまで競技会場の選定において、どのような現地調査を行ってきたのか伺いたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局競技・渉外担当部長

 競技会場をどこにするかの検討に当たりましては、IFやIOCが定める競技基準や観客席の基準などを満たすことができるか、オリンピックを開催するに必要な運営スペースが確保できるかなどを図面や地図等で検討の上、現地の周辺状況等を確認するために、いずれの会場につきましても、現場視察による現地調査を行うなど、会場としての適否を慎重に判断してまいりました。
 例えば、ボート、カヌースプリント会場の検討に当たりましては、平成二十六年には長沼ボート場の現地視察を二回行っており、うち一回はIFも同行し、現地において議論を行っております。
 また、今回の検討においても、同会場の適否を改めて検証するために、現場視察を二回実施しております。

4.競技会場見直しを検討するにあたっての意見交換について

〇菅野委員

 今の答弁でもありますけれども、しっかりIF、国際競技連盟も同行して、そして現地にもしっかりと行っているということがわかりました。
 そこで、さらに競技会場の見直しを検討するに当たって、実際に施設を利用する競技団体、いわゆるNFの意見を聴取することは極めて当然で、欠かすことができない要素であります。
 では、オリンピック・パラリンピックの調査チーム、これは国内競技団体、NFとの意見交換をいつ、またどの程度行ってきたのか、そして、その場でどのような意見が出されたのかを伺いたいと思います。

○小笠原総務局都政改革担当部長

 九月二十九日の第二回都政改革本部会議において、オリンピック・パラリンピック調査チームから調査報告を行い、新規恒久三施設の見直しについての提言を行いました。
 そのため、この提言の内容を説明するとともに、意見や要望を伺う目的で、関連する日本ボート協会、日本カヌー連盟、日本水泳連盟及び日本バレーボール協会の四つの競技団体と意見交換を行いました。意見交換は、十月の七日から同二十六日まで、それぞれ一時間から二時間程度行われております。
 各競技団体からは、三施設を当初の予定どおり整備し、大会を開催してほしいとの要望がございました。

〇菅野委員

 各競技団体からは、やはり現行どおり、予定どおりの施設を整備してほしいという意見があった、要望があったということを伺いました。
 オリ・パラ準備局が行ってきた会場計画再検討の事実と比較することで、都政改革本部の調査チームにおける検討の様子がある程度わかってきました。これについては今回の報告書について議論し、内容を検討していく上で留意しておく必要があると考えます。
 その上で、報告書で提示されている三施設の会場の見直しのそれぞれの選択肢についても、これから幾つか確認をしていきたいと思います。

■ボート・カヌー会場について - 長沼ボート場の抱える課題

1.長沼ボート場の課題

〇菅野委員

 それではまず、ボート、カヌー会場のことについて伺いたいと思います。
 去る十一月七日の当委員会において、新規恒久施設の見直しとして、ボート、カヌースプリント会場については、宮城県の長沼ボート場を選択肢の一つとすることが示されました。しかしながら、平成二十六年度の会場再検討、また、平成二十七年度の設計施工一括発注方式での発注案件として公表した際に、海の森水上競技場以外にオリンピックの競技会場となる施設がないということを確認してきました。
 そこで、改めてこれまでの検討において、長沼ボート場の課題はどのようなものだったのかを伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 平成二十六年度に実施いたしました会場の再検討では、全国七十カ所のボート場から、日本ボート協会認定の国際大会の開催が可能なA級コースや、近隣県の比較的大きな湖などを抽出し、施設整備の実現性や選手村、レガシー等の観点から総合的に評価を行いました。
 長沼ボート場は、大会開催に必要となる施設を配置するための敷地が限られておりまして、新たな土地の確保や造成、競技コースに沿った桟橋の整備が必要となります。また、東京から三百キロメートル以上遠隔にあるという立地から、選手村の分村の必要が生じること、大会後の利用が限定的となる可能性があることなどの課題がございます。
 最終的には、国際競技団体等と現地を確認いたしまして、海の森水上競技場以外にオリンピック競技会場となる場所がないとの結論に至ったものでございます。

〇菅野委員

 長沼ボート場をオリンピック・パラリンピックの競技会場とする場合、多くの課題があり、国際競技団体とも協議した中で、海の森水上競技場しかないという結論に至ったわけです。
 オリンピック・パラリンピックの精神からいっても、世界各国から集まる選手たちが、選手村で国境や宗教、競技種目を超えた交流を体験できることが非常に重要とされています。調査チームがこれらの課題や経緯について把握していたとすれば、なぜ長沼を選択肢として位置づけたのかが疑問です。
 さらに、報道等によると、宮城県知事は九月九日に上山特別顧問から、見直したい、長沼も変更先の候補、小池知事がリオ・パラリンピック閉会式に行く前に会いたいというメールがあり、九月十三日には、小池知事と村井知事が会談したと証言しています。つまり、調査当初から長沼への変更ありきで行動してきたということが明らかにもなっています。

2.宮城県への適切な情報提供

〇菅野委員

 その後、調査チームは九月二十九日に、長沼を候補とする調査結果を報告し、小池知事が十月十五日に長沼の現地を視察しました。その際、宮城県は、大会開催のためのボート場や選手村を恒設施設として整備するとアピールをしています。
 宮城県にも、あらかじめ長沼の課題を十分に伝えておく必要があったと思いますけれども、都から宮城県に対してどのような情報提供を行ったのか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 宮城県に対します主な情報提供につきましては、まず、第二回都政改革本部会議開催後の十月三日に、県職員が過去の都の検討状況の資料を求め、来庁いたしました。その際、平成二十六年度に実施いたしました会場再検討時の長沼ボート場の検討案や、国際ボート連盟の規定等を説明の上、お渡ししております。
 また、十月七日には、日本ボート協会、日本カヌー連盟の職員の同行も得て、県の関係部局の職員と現地を調査いたしますとともに、改めまして東京都が過去に検討いたしました際の資料や選手村分村の考え方などにつきまして説明し、意見交換を実施しております。
 その後の十月十五日、都知事が現地を視察した際に県の案が示されましたために、県の案で大会を開催するに当たりましての課題等を整理いたしまして、三十日に県に説明しております。
 その後も県からの問い合わせなどに応じまして、逐次情報提供等をしてまいりました。

〇菅野委員

 一部の報道によると、宮城県側が、都が情報を出さないと批判しているとありましたけれども、実際は適切に情報提供してきたことが確認できました。
 しかし、都が県に情報提供を行ったのは調査報告以降であり、九月の特別顧問からの打診のときに、課題が県へ正確に伝えられ、認識されていたかは不明です。選択肢として議論の俎上にのせるのであれば、少なくとも実現可能性を確認しておく必要があります。

3.長沼ボート場の課題 - 水位を一定に維持することが困難である

〇菅野委員

 調査チームの報告書の中には、長沼の主な課題として、水位を一定に維持することが困難との記載があります。水位を一定に維持することが困難であるというのは、どのような状況を意味するのでしょうか。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 国際競技団体の規定では、競技コースの水深は三メートル以上、陸地と水面の高低差は一メートル以下とすることになっておりますため、適切な水位で一定に維持することが求められます。
 長沼ボート場は、治水目的で整備された長沼ダムに整備されておりまして、洪水時には河川等から水を引き入れるため水位が上昇することなど、季節や天候により水位が大きく変化いたします。水位の上昇が大きい場合には施設が水没し、大会が開催できなくなるおそれがございます。
 夏季には、洪水に備えてダムの水位を低下させておく必要がございますが、近隣の水田に水を供給することによりまして水位がさらに低下するため、国際競技団体の規定を満たすには厳しい状況でございます。
 なお、一般的には、洪水時に周囲ダムへの水の流入をとめることは不可能でございますが、現在、宮城県におきまして、水位をどのように管理していくか検討していると聞いております。

〇菅野委員

 確実な大会開催のためには、水位を一定に維持することが不可欠です。しかしながら、治水ダムである以上、リスクがあるといわざるを得ません。埼玉県の彩湖も洪水調節池であるため、競技会場とすることは難しいと聞いていましたが、長沼も同じ状況だということがわかりました。

4.長沼ボート場の課題 - 競技関係者が葛西の会場と往復することになってしまう

〇菅野委員

 長沼ボート場は、国際大会が開催できるボート場とのことですけれども、オリンピック・パラリンピックを開催する場合、本当にオリンピック・パラリンピックの開催として適切な、本当に競技にかかわる課題はないのかどうか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 オリンピック・パラリンピック競技大会では、ボートとカヌースプリントの両方の競技で使用される会場になりますが、長沼ボート場は、レーン幅など、ボート専用となってございまして、カヌースプリントにも対応した仕様とする必要がございます。
 なお、カヌー競技には、スプリントとスラロームがございまして、スラローム会場は、葛西臨海公園隣接地でございます。カヌースプリント会場が長沼となりました場合、二つの会場が大きく離れてしまいます。大会を円滑に運営する上で、競技関係者は両会場を頻繁に往復することになりますことから、カヌーの競技団体といたしましては、競技運営上、困難を来すとしております。

〇菅野委員

 今のような話というのは、本来、NFとは事前に話をして、解決可能かどうかというのをやはり明らかにしておくべきだったんだなというふうに思います。

5.長沼ボート場の課題 - 整備スケジュールの過密性

〇菅野委員

 そこで、報道によると、長沼ボート場を競技会場として整備する場合、整備が間に合わないといわれていますけれども、長沼を会場とした場合の整備スケジュールについてはどのように認識しているのか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 長沼ボート場に競技会場を変更しました場合、基本計画の立案、地盤調査や測量作業、基本設計、実施設計、工事の段階を経まして、大会の前年に実施予定でございますテストイベントまでに整備を完成させることになりますが、最短のケースを想定した場合でも、かなり厳しいスケジュールになると認識しております。
 現在、宮城県におきまして、具体的な工程計画を検討していると聞いております。引き続き、宮城県の求めに応じまして情報提供を行うなど、適切な対応に努めてまいります。

〇菅野委員

 長沼ボート場は、復興五輪という観点から選択肢の一つになっているということは承知していますけれども、さまざまな課題やリスクがあり、まだ実現可能性が十分確認されていないというものであることがわかりました。

■ボート・カヌー会場について - 海の森水上競技場

1.海の森水上競技場の整備費について

〇菅野委員

 先ほども述べましたとおり、これまで会場計画については、本委員会においても多くの検討を重ねてきました。とりわけ、海の森水上競技場については、多様な角度から時間をかけて議論を積み重ねてきたところです。
 その中で、都議会自民党として幾度も繰り返し強調してきたのは、何よりも大切にしなければならないのは、大会後のレガシーであるという点です。それぞれの施設を大会後も貴重な財産として引き継がれていくものとするために、我々はこれまで多くのエネルギーを注ぎ込んできたのです。
 もちろん、適正なコスト感覚は常に持ち続けなければなりませんが、同時に、二〇二〇年を契機として、東京にどのようなレガシーを残していくのかを考えていかなければなりません。
 そのような観点から、海の森水上競技場についても確認しておきたいと思います。
 海の森水上競技場については、これまでも整備費が高いという声も聞かれるため、十分に理解が得られるように取り組むことも大切だと思いますが、海の森水上競技場の整備費については、オリンピック経費とレガシー経費を算出していたと聞きましたけれども、それはどのようなものか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 アジェンダ二〇二〇に基づきまして、IOCからの求めに応じて、全体整備費四百九十一億円を性質別に、オリンピック経費九十八億円とレガシー経費三百九十三億円に区分したものでございます。
 オリンピック経費は、大会時に競技運営のために使用される部分で、大会後も主に競技で利用される施設の経費でございまして、レガシー経費は、大会後に多様な水上スポーツのほか、レジャーやイベントなど広く都民に利用され、将来の海の森エリアのにぎわいにつながる長期的な投資でございます。

2.レガシーを考慮した整備内容と減縮額可能性について

〇菅野委員

 この区分によると、競技施設の整備費はオリンピック・パラリンピックのためだけではなく、将来にわたって長く都民に活用される貴重なレガシーをつくる経費が大部分を占めていることと考えることもできます。こうした考え方を周知していくことで、都民の理解も得られるのではないでしょうか。
 その上で、整備費をできるだけ抑えるよう取り組む必要があります。平成二十七年十一月九日に開催された当委員会において、我が党の質問に対し、施設整備費については、設計施工一括方式により発注した整備費のほかに、今後措置が必要となる工事中のセキュリティー経費や、追加工事が生じた場合の対応費を見込んでいますが、これらについても適切に管理していくと答弁をされています。
 海の森水上競技場では、今後措置する経費として九十二億円、追加工事が生じた場合の対応費で九十億円計上していましたが、これらの経費の縮減可能性についてはどのように検討されているのか伺います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 昨年度の段階で見込んでおりました追加工事等が生じた場合の対応費につきましては、実施設計が進捗したことに伴いまして、大幅な増額を想定せず対応できる見通しが立ってまいりました。
 また、今後措置する経費といたしまして、IF等と協議する施設として、テレビカメラ撮影用のポンツーンなどを計画しておりましたが、陸上の自転車走行路を兼用して撮影するよう調整しておりまして、ポンツーンが不要となる方向でございます。
 工事中のセキュリティーへの対応費につきましても、関係機関と具体的な調整を進め、当初想定よりも規模を大幅に縮小できる見込みとなっております。
 引き続き、コスト縮減に向けて関係機関と整備内容につきまして協議し、具体的な縮減額を算定してまいります。

3.具体的なコスト減縮について

〇菅野委員

 追加工事が生じた場合の対応費としては、海の森水上競技場だけではなく、アクアティクスセンターで三十億円、有明アリーナで十五億円を計上しており、また、入札後の落札差金として、オリンピックアクアティクスセンターでは六十八億円が生じています。
 三施設合わせると二百億円程度になるこれらの費用は、何もなければ使用しないことから、実施設計が進捗してきた状況を踏まえると、現時点で削減額と考えるべきだと思います。
 次に、海の森水上競技場の設計施工一括方式で既に大成JVと契約を締結している工事の中では、具体的にどのようなコスト縮減が可能であると考えておられるのか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 海の森水上競技場の整備内容につきましては、IF等との協議を経て決定されてきたものでございますが、さらなるコスト縮減の可能性を検討しております。
 例えば、遮熱性舗装や中高木の植栽を取りやめることや、建物を仮設レベルに低廉化することなどが考えられます。
 引き続き、コスト縮減に向けまして、競技団体や受注者と整備内容について検討してまいります。

4.海の森水上競技場の工事中止の理由について

〇菅野委員

 さまざまな縮減の可能性を検討されていることはわかりましたが、既に契約をされている案件であることから、契約手続や今後のスケジュール等にも十分配慮するとともに、レガシーとしての価値も考慮しながら、引き続き関係者と十分な調整を図ることを要望しておきたいと思います。
 ところで、この海の森水上競技場の工事については、本日の報道によると、締め切り堤のくい打ちの工事を一時中止することとなっていましたが、なぜ今の段階で工事をやめたのでしょうか、伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 十一月七日の当委員会におきましてご報告いたしましたように、ボート、カヌースプリント会場につきまして、複数の選択肢について検討することになりました。月末には、IOC、組織委員会、国、都によります四者協議によりまして結論が示される予定でございます。
 四者協議まで一週間程度であること、ちょうどこの時期に締め切り堤のくい打設の工事の段階に入ることとなったことから、一時的に工事を中止することといたしました。

〇菅野委員

 今回の報道は、進んでいる工事について突然中止を決めたというような印象があります。海の森水上競技場の工事スケジュールについては、十月十八日にIOC・バッハ会長との面談の際に知事が手渡した資料の中で、図で示されていました。その図では、海の森水上競技場の工事を示す矢印は、十一月末のIOC、JOC、IF、NF、組織委員会とのミーティングでの決定まで続いており、工事を中止することは想定されていません。
 この資料については、都の方針として意思決定したとの誤解を避けるため、表紙から、作成者、ガバナーズオフィスの記載を直後に削除していますが、いずれにしても、この資料を書いた調査チームの顧問は、工事について知事にどのように説明をしたのか、また、知事は、それをどういうふうに認識し判断をされたのか大変気になるところです。
 こうした事態を見ていると、関係者の間で情報や方向性が共有されていたのか、連携は十分だったのか、疑問を感じざるを得ません。関係者の息が合わなければ、オリンピック・パラリンピックのような大きなプロジェクトの準備を進めることは困難だと思います。今後は関係者の間でしっかりと連携をとって進めていただくよう、強くお願いをしておきます。

5.会場変更、工事中止にともなう費用について

〇菅野委員

 一時中止しても、既に海の森水上競技場の整備は進んできていますので、長沼ボート場に変更する場合には費用が発生してくると思われます。現在までに投資した費用を含め、海の森水上競技場の建設中止にどの程度の金額を費やすことになるのか伺いたいと思います。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 会場が変更になる場合は、その後の対応につきまして、受注者と契約解除や出来高精算、損害賠償等について協議を行う必要がございます。
 現時点で、海の森水上競技場の整備を中止した場合には、既に執行済み、または契約中となってございます揚陸施設の撤去、移設工事、約三十八億円や、調査設計約九億円に加えまして、現状への復旧のための費用、現在進行中の会場整備工事の出来高や損害賠償にかかる費用などが考えられます。

6.海の森公園も含めた水上競技場のレガシー

〇菅野委員

 ボート、カヌースプリント会場を海の森水上競技場から長沼に変更する場合、レガシーが残らないのに費用の負担を都民に強いることになるわけです。
 今回の会場の変更という選択肢は、都の一方的な都合によるものであり、こうした損失が生じるだけではなく、レガシーに対する都民の期待や国際的な信頼を損ねる可能性など、十分に考慮する必要があると思います。四者会議においても、都が正確な情報を伝えて、最善の結論が導き出されるように、ぜひ議論していただきたいと思います。
 今回、調査チームの報告も踏まえ、海の森水上競技場の後利用について、改めて何点か質問したいと思います。
 調査チームの報告書では、海の森水上競技場の大会後の活用について、不確実性があると指摘されています。しかしながら、隣接する海の森公園と一体的に捉えることで、その活用の幅は格段に広がり、豊かな水辺や緑に囲まれた都民の憩いの場となる可能性を秘めていると考えます。
 海の森水上競技場は、大会のためだけではなく、大会後も多くの都民に利用されるすばらしいレガシーを残すために整備していくことが重要です。
 そこで、海の森公園も含めた水上競技場のレガシーを都はどのように考えているのか伺います。

○鈴木オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長

 海の森水上競技場は、広大かつ静穏な水面を有しており、隣接する仮称海の森公園と一体的な活用を図ることで、水上スポーツに限らず、アウトドアスポーツや野外イベントなど、幅広い活用が期待できます。
 そのため、公園と水上競技場の歩行者や自転車の動線の連続性を確保するとともに、水辺や緑を生かした環境学習、飲食、宿泊施設や駐車場の相互利用などにより、公園と連携した活用を進めてまいります。
 さらに、二〇二〇年に開通予定の臨港道路南北線に加えまして、東京テレポート駅や新木場駅からのバス路線の整備の検討や駐車場の設置など、関係各局や交通事業者と連携して、交通アクセスの改善に向けた取り組みを進めてまいります。
 現在、海の森水上競技場に近接いたします若洲の都立及び区立の公園には年間九十万人、城南島海浜公園には年間四十七万人が訪れております。
 交通アクセスを改善いたしまして、海の森水上競技場を公園と一体的に活用することで、海の森につきましても、多くの都民が訪れるスポーツと憩いの場としてまいります。

〇菅野委員

 今、答弁にあったように、海の森の周辺には既に多くの人が訪れている公園があるわけです。海の森水上競技場と海の森公園がレガシーとして一体的なものであることを常に意識して、今後とも検討を進めていただきたいと思います。

7.海の森水上競技場の大会後の活用について

〇菅野委員

 次に、海の森水上競技場の大会後の活用について伺います。
 一部には、戸田漕艇場から拠点を移す大学、チームが少ないので、海の森水上競技場の活用は難しいのではないかという意見もあります。
 そこで、来場者目標三十五万人の実現可能性や、戸田漕艇場とのすみ分けをどのように考えているのかも伺いたいと思います。

○鈴木オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長

 年間の延べ来場者目標三十五万人のうち、競技利用は三十一万人、レクリエーション利用は四万人を見込んでおります。
 利用の中心となりますのは、大会利用でございまして、各競技団体の大会開催の意向を確認の上、年間三十大会で二十七万人を見込んでおります。これは、二〇〇五年に長良川で開催されました世界ボート選手権大会では約十二万人が来場している実績や、競技団体に開催を予定しております国内大会の来場者の実績を確認の上、目標数を積み上げております。
 このほか、競技団体や水上競技場の運営の経験を有する事業者へのヒアリングによりまして、強化合宿やボート、カヌー教室などのレクリエーション利用の来場者を積み上げておりまして、実現可能な目標と考えております。
 なお、戸田漕艇場につきましては、現在、さまざまな規模の数多くの大会や練習会が開催されておりまして、加えて、年間で百八十日以上競艇が開催されているなど、非常に混み合った状況でございまして、大学等の練習に支障を来す場合もあると聞いております。
 海の森水上競技場は、国際基準を満たす最新の競技場といたしまして、国際大会や国内の主要大会、都大会の開催のほか、全国レベルの強化練習などで活用する計画としておりまして、戸田を拠点としている大学やチーム等が当初から数多く移転してくることは想定してございません。
 競技団体も、海の森水上競技場は、国内外の主要大会の会場や全日本レベルの強化練習の場、そして、戸田漕艇場は、大学等の練習の場と機能の分担を考えております。

〇菅野委員

 戸田漕艇場と海の森水上競技場の双方が一体となって、日本のボート競技を初めとしたさまざまな水上スポーツを発展させてもらうことを大いに期待したいと思います。
 海の森水上競技場については、年間三十大会の開催など、競技団体の意向をしっかりと踏まえた実現可能なレガシーが描かれている一方、長沼については、調査報告書では、大会開催について競技団体は消極的との記載があります。また、インターハイの恒久開催を提案とありますが、報道によると、全国高等学校体育連盟、高体連は慎重な姿勢を示しております。
 レガシーについては、不透明といわざるを得ません。このような長沼がなぜ選択肢の一つになっているのか、レガシーの観点からは疑問が残ります。

8.収支の見込みについて

〇菅野委員

 そこで、次に、収支の見込みについて伺いたいと思います。
 これまで都は、実施設計の状況等を踏まえながら、収支について検討するとしてきましたが、今回、本委員会の要求資料においても施設の収支見込みが示されました。
 そこで、海の森水上競技場の収支見込みの内容についてお伺いしたいと思います。

○鈴木オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長

 今回、実施設計の進捗状況を踏まえまして、大規模な新規恒久三施設について収支見込みを試算いたしました。
 海の森水上競技場の収支のうち、収入は、類似施設の使用料などを参考にするとともに、合宿等での宿泊料、イベント運営収入を初め、施設運営計画中間のまとめで掲げた事業に伴う収入など、合計一億二千七百万円を計上してございます。
 一方、支出は、施設の設計内容を反映させまして、光熱水費、業務委託費などの維持管理費三億二千五百万円を計上してございます。
 この結果、現時点での試算では、収支は二億円程度のマイナスとなる見込みとなってございますが、今後、収支改善策についてさらに検討してまいります。

〇菅野委員

 スポーツ振興のためには、コストがかかることも理解できますけれども、維持管理コストの縮減、収入の確保に努め、収支改善に向けた取り組みをぜひ行っていくようお願いをいたします。
 大会後の東京にレガシーを残し、世界のアスリートとの競い合いの場を次の世代に引き継いでいくためにも、海の森水上競技場を着実に整備していくよう要望しておきます。
 そして、先ほどの質問で、海の森水上競技場が建設中止となった場合に、揚陸施設の撤去、移設工事に約三十八億円、調査設計費約九億円というふうに具体的な数字が出されましたけれども、現時点で確定はできないかもしれませんが、通常の想定というか、想定計算の中で総額で幾らぐらいになるのか、ちょっとお答えいただけませんでしょうか。

○花井オリンピック・パラリンピック準備局施設担当部長

 金額の確定には、受注者との協議が必要でございますために、金額について現段階で確定できておりませんが、通常でございますと、おおむね百億円程度の支出が生じるものと考えられます。

〇菅野委員

 今のように、ボート、カヌースプリント会場を海の森水上競技場から長沼に変更する場合、レガシーが残らないのに百億円もの負担を都民に強いることになるわけです。
 今回の会場の変更という選択肢は、先ほどもいいましたけれども、一方的な都合によるものでありますので、百億円という数字がひとり歩きしてはいけないのかもしれませんが、そういった損失が生じるだけではなくて、レガシーに対する都民の期待や国際的な信頼を損ねる可能性なども十分に考慮して検討していただきたいと希望いたします。

■アクアティクスセンターについて

1.課題を踏まえた実現可能性の検討

〇菅野委員

 それでは次に、アクアティクスセンターのことについて伺っていきたいと思います。
 今回の提案では、現計画地において二万席で新築し減築をしない案、観客席を一万五千席に縮小して新築する案、辰巳国際水泳場の近くに敷地を移し観客席を一万五千席に縮小して新築する案の三案が示されています。
 今回の案を実施するメリットがある一方で、実現に際した課題も踏まえて実現可能性を検討すべきですが、ご見解を伺いたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局施設整備担当部長

 今回の提案は、いずれも規模の縮小や減築取りやめによる整備費の縮減、減築工事に伴う施設の休業期間がなくなるなどのメリットがある一方で、計画変更によりまして、事業者との契約やスケジュールの影響、設計工事費などの増額も考えられます。
 また、敷地を辰巳水泳場の近くに移す案では、さらに詳細な地盤調査が追加となること、開園している公園の公園内の土地を使用することから、代替となる公園を整備する必要があること、埋設物が発見された場合の対応など、さまざまな課題も加わってまいります。
 こうしたことから、今回の提案につきましては、メリット、デメリット、また実現に向けた課題を十分に踏まえた上で総合的に判断する必要があると認識しております。

〇菅野委員

 現在の計画でも厳しいスケジュールであると聞いています。大会に影響がないよう、しっかりと実現可能性を探ってもらいたいと思っています。
 都議会自民党としては、二〇二〇年大会の成功はもとより、国際競争力を発揮し、世界から選ばれる都市として、大会後も世界レベルの大会が開催でき、誘致できる水泳場が必要であると考えます。
 今回の提案は、いずれも減築を取りやめるというものですが、維持管理コストの縮減にも努めながら、東京にふさわしいゆとりのある施設とし、大会後も将来にわたり、世界の水泳を引っ張っていけるアクアティクスセンターとなるよう強く要望しておきます。

■バレーボール会場について - 横浜アリーナ

1.横浜アリーナの課題について

〇菅野委員

 それでは次に、バレーボール会場についてお伺いしたいと思います。
 バレーボールの会場では二案が提案され、コスト縮減から、既存施設である横浜アリーナが選択肢の一つとされています。
 横浜アリーナの活用案の提案に当たり、事前の調査が行われたとは思いますが、オリンピック・パラリンピック調査チームの特別顧問の方たちは、いつから横浜市、横浜アリーナの担当者へのインタビューを始めたのか伺いたいと思います。

○小笠原総務局都政改革担当部長

 十月六日に株式会社横浜アリーナから都政改革本部の事務局に電話がございまして、九月二十九日の調査報告書について問い合わせがありました。
 このことについて調査チームに伝えたところ、調査チームから横浜アリーナに連絡をとって調査を開始し、その上で横浜市と連絡をとったとのことでございます。

〇菅野委員

 そもそも、横浜アリーナでオリンピックのバレーボール競技というのは開催可能なんでしょうか。課題があるからこそ、これまでも競技会場として選択されてこなかったんじゃないかなと思うんですが、横浜アリーナの課題は何なのかお伺いしたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局施設整備担当部長

 既存の横浜アリーナを競技会場として活用するためには、競技面や運営面で課題があると認識しております。
 例えば、競技面での課題としましては、ウオームアップエリアの面積や選手控室の設備が十分でないこと、また、運営面での課題としましては、放送用の仮設施設用地の面積が敷地内では不足していること、観客入場スペースが十分に確保できず、二カ月程度は公道を占用して使用する必要があり、周辺住民への影響が大きくなること、さらに、警備体制の検討も必要であり、幹線道路を含めた周辺道路への影響などが考えられます。
 これらの課題につきましては、調査チームでは解決の可能性があるとして、横浜アリーナを検討案の一つとしており、横浜市を初め組織委員会やIOC、IFとの個別協議が必要となるとしております。こうした状況を踏まえまして、今週の十六日には、組織委員会、横浜市などと意見交換を行ったところでございます。
 今後、IFなどからも解決すべき課題が示される予定でございまして、これらを踏まえまして、横浜アリーナの活用の可否が適切に判断されるものと考えております。

〇菅野委員

 今回の調査報告書で横浜アリーナの活用が提案されていますけれども、今の答弁でもさまざまな課題があることがわかりました。
 IFやNFなどとよく協議をした上で検討案をまとめれば、課題への適切な対応方策も示されたと思います。そういったコミュニケーションが不足していたんじゃないかと思うわけですが、会場として活用するために必要な基礎的な検討も何か十分でないような印象を受けます。

2.横浜アリーナを活用する場合のコスト

〇菅野委員

 調査チームは、横浜アリーナを活用するためのコストは非常に限定的とし、項目を挙げて計約七億円としています。これは横浜アリーナを活用するための全てのコストが七億円なのか、その一部だけを示しているのかはわかりませんが、本当に七億円で横浜アリーナをオリンピックの会場とすることができるのでしょうか。
 横浜アリーナを活用するためのコストをどのように考えられるのか伺いたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局施設整備担当部長

 調査チームが横浜アリーナを活用するためのコストとしてお示ししております約七億円でございますが、約二カ月間の横浜アリーナの使用料と観客席を一万五千席に増設するための費用の合計と聞いております。
 実際に横浜アリーナをバレーボール会場として使用するためには、このほかに周辺民有地の使用料や周辺の企業への営業補償、公道を占用して使用することへの対策費、敷地の周辺も含めた段差解消等の改修や整備費用、工作物の移設や植栽の移植、伐採費など、さまざまな費用が必要となる可能性がございます。
 横浜アリーナを会場にするための全体的なコストにつきましては、今後詳細な調査を行った上で必要な項目を精査し、積み上げていく必要があると考えております。

〇菅野委員

 やはり全てのコストで七億円というのはできないのかな、そういうことでないことはわかりました。もちろん七億円で、やっぱりもともとオリンピック・パラリンピックの会場を整備するというのは困難だとは思いますけれども、調査チームは、有明アリーナの全体整備費四百四億円に対して、横浜アリーナでは七億円で済むと誤解を招くような示し方をしているように感じます。
 今後の検討の中で、横浜アリーナを活用した場合の費用は精査をして積み上げる必要があるとのことですが、速やかに全体のコストを明らかにしていただきたいと思います。

3.横浜市への情報提供について

〇菅野委員

 横浜アリーナを会場とするためには、周辺の影響が大きいことが課題であると先ほどの答弁にもありました。横浜市はそのような課題を実際どの程度理解しているのか、これまで横浜市に対してどのように情報提供してきたんでしょうか。
 そこで、横浜市に対して、いつ、誰がどのような情報を提供したのか伺いたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局施設整備担当部長

 横浜アリーナを含めた検討案が示されたことを踏まえまして、今週の十六日でございますが、組織委員会、横浜市などと意見交換を行ったところでございます。
 今後は、横浜市からの求めに応じまして、会場整備の検討に必要な資料など、必要な情報提供を行ってまいります。

〇菅野委員

 今の答弁からも、調査チームが提案するに当たって、横浜市がどこまで課題の重要性を認識されていたのか本当に疑問が残るわけですけれども、都の検討案として提案された以上、都としても横浜アリーナを会場とする場合の課題もしっかりと抽出して、横浜市にも十分に認識して対応を検討していただくように、しっかりと情報交換をしていただくよう要望しておきたいなと思います。

■バレーボール会場について - 有明アリーナ

1.有明アリーナの整備に対する要望について

〇菅野委員

 次に、有明アリーナのレガシーについて質問したいと思います。
 先日も日本バレーボール協会が一九六四年の東京大会で日本中を歓喜に包み、そして世界を驚愕させた女子バレーボールの東洋の魔女のメンバーとともに、有明アリーナの建設を求める嘆願書を都に提出したと聞いています。
 有明アリーナの整備に対する競技団体からの要望が強いと聞いていますが、どのような要望が寄せられているのか、ここで伺いたいと思います。

○小野オリンピック・パラリンピック準備局競技・渉外担当部長

 有明アリーナの整備に対する要望につきましては、第二回都政改革本部会議において調査報告書が公表されました九月二十九日に、日本バレーボール協会より、国際都市東京のレガシーと呼ぶにふさわしい施設を整備するようコメントが公表されております。
 また、国際バレーボール連盟も、二〇一二年の段階から有明アリーナの会場計画を全面的に承認しており、会場計画の見直しが東京大会の成功に与える影響について非常に懸念しているというコメントを発したと聞いております。
 十月二十六日には、日本トップリーグ連携機構を初めとする競技団体など十団体の連名による嘆願書を受領いたしました。
 嘆願書では、有明アリーナは、世界選手権などの国際大会や国内トップリーグを開催することで、各競技の普及や国際競技力の向上にもつながるレガシーとなる施設であり、調査チームの報告書で提言された整備見直しの撤回を要望しております。
 また、十一月八日には、お話の一九六四年の東京大会で金メダルを獲得した女子バレーボールのオリンピアン、日本バレーボールリーグ機構、そして日本バレーボール協会から連名の嘆願書を受け取っております。
 オリンピアンからは、有明アリーナはスポーツ発展のシンボルとなる施設であり、スポーツ界の発展のためにも有明アリーナを建設してほしいとのコメントがあり、日本バレーボール協会からは、バレーボールを含む多くのアリーナ競技の発展に寄与し、未来のアスリートを育てる施設として日本のスポーツ界に大きく貢献するとして、有明アリーナの新設を強く要望されております。

〇菅野委員

 今、答弁にもありましたけれども、アスリートや競技団体からの切実な訴えが数多く寄せられているわけです。こうしたアスリートの声にしっかりと耳を傾け、また国際的な信用を損ねることのないようにご配慮いただきたいと思います。

2.収支見込を考慮した大会後の利用について

〇菅野委員

 また、有明アリーナはスポーツだけではなく、文化の発信拠点としての後利用も検討されています。都内、そして首都圏のレベルでも大型アリーナは不足しており、バレーボールを初めとしたスポーツ利用はもちろん、コンサートなどのイベント利用においても有明アリーナに寄せる期待は大きなものがあります。
 重要なことは、オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、スポーツ利用とイベント利用のバランスを図りながら、大会後の後利用をしっかりと考えていくことです。
 そこで、有明アリーナの後利用について、スポーツと文化の両面からどのように考えているか、大会後の収支の見込みも含めお伺いしたいと思います。

○鈴木オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長

 都はこれまで、外部有識者等で構成するアドバイザリー会議を設置いたしまして、新規恒久施設の後利用を検討してまいりました。
 本年五月に公表いたしました施設運営計画中間のまとめでは、有明アリーナの後利用として、一万五千席の規模を生かし、国内外の主要な競技大会の会場として活用するとともに、一定期間、仮設のスポーツ床を設置して、さまざまなスポーツ大会等で利用できるようにしていくこととしております。
 また、大きな需要が見込まれますコンサート等の文化イベントを開催し、東京の新たなスポーツ、文化の拠点としてまいります。
 このように、スポーツとコンサートなどの文化イベントのバランスを適切に図りながら後利用していくこととしておりまして、こうした施設運営によりまして、年間収支につきましても九千万円から二億五千万円程度の黒字を見込んでございます。

〇菅野委員

 都は、以前からスポーツとイベントのバランスを考えて、さらに大会後の収支も考慮しながら、後利用の検討をしっかりしてきたことが確認できました。

3.有明アリーナのイベント会場としての活用

〇菅野委員

 一方、調査チームの報告書では、有明アリーナはイベント会場として必ずしも立地がよいとはいえないと指摘していますが、一部にはコンサートで本当に利用されるのか懸念する意見も聞かれると書いてあります。
 この点について、都としてどのように考えているか見解を伺いたいと思います。

○鈴木オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長

 都はこれまで、日本を代表する主要なコンサートプロモーターにヒアリング調査を行いまして、民間シンクタンクにも調査分析を依頼するなど、有明アリーナにおけるコンサート等の需要について慎重に調査を重ねてまいりました。
 コンサートプロモーターからは、アリーナを会場とする大型コンサートは増加傾向にある中で、一万五千人規模のアリーナ施設は不足しておりまして、有明アリーナでは大きなコンサート需要が見込めるとの見解を得ております。
 また、有明アリーナは三路線の五つの駅が利用可能でございまして、コンサート等のイベントが終了し観客が一斉に帰路についた際、一つの駅に集中せず、混雑が分散されるメリットもございます。コンサートプロモーターからは、有明アリーナの立地条件は、マイナス要因とは考えにくいとの意見をいただいております。
 こうした調査結果に基づきまして、有明アリーナの後利用について、スポーツ、そしてコンサート等の文化イベントの両面から、最大限有効活用していくこととしております。

〇菅野委員

 有明アリーナに対しては、スポーツ界やイベント業界の双方から強い期待が寄せられており、こうしたしっかりとしたレガシーが見込まれる施設を着実に整備していくよう強く要望して、次の質問に移ります。

■大会後も都民に親しまれ、活気をもたらす会場施設にするよう取り組む決意

1.今後のスケジュールについて

〇菅野委員

 これまでの質疑により、三施設の検討案について、整備コストやレガシーの考え方を確認してきました。最終的には四者協議の場で検討するとのことですが、十一月初めには既にIOCテクニカルワーキング、作業部会で実務的な検討を行ったと聞いています。
 先日のIOCテクニカルワーキングでの検討内容や、今後のスケジュールについてお伺いしたいと思います。

○根本オリンピック・パラリンピック準備局大会施設部長

 会場見直しに係るIOCテクニカルワーキングは、十一月一日から三日間開催され、都が提案した三施設の検討案などについて説明し、意見交換を行いました。
 IOCからの求めにより、詳細な内容をお話し申し上げることができませんが、複数の検討案を客観的かつ思慮深く評価できるよう、必要な情報を集め、全体像をつかむことに注力していくこととしております。
 これらの実務的な検討の後、十一月末にはIOC、組織委員会、国、そして都の代表の四者による調整を行い、会場見直しについての結論を出す予定でございます。

2.四者協議の結論を踏まえ大会準備に取り組む決意

〇菅野委員

 今月末の四者協議の開催により、会場見直しは一つの節目を迎えます。大会まで残された期間はわずかであり、大会準備は待ったなしの状況です。限られた時間で関係者との調整や残された課題に取り組み、大会を成功に導くことは容易なことではありません。
 四者協議の結論を踏まえ、今後も引き続き大会準備のかじを取っていく局長の決意を伺っておきたいと思います。

○塩見オリンピック・パラリンピック準備局長

二〇二〇年大会の開催まで、残された期間は四年足らずであります。局としては、四者協議の結論をしっかりと受けとめ、遅滞なく大会準備に取り組んでまいります。
 新たに整備する競技施設につきましては、引き続き可能な限りコスト縮減に努めるとともに、大会後のレガシーに重きを置き、多くの都民に利用され、親しまれる施設となるよう、後利用についての検討の深度をさらに深めてまいります。
 今後、IOCやIF、NF、組織委員会、国などの関係者と十分に連携し、都議会の先生方からご支援をいただきながら、施設の整備を初めとした大会準備に邁進してまいります。
 そして、二〇二〇年東京大会が人々の記憶に残るすばらしい大会となるよう、これからも局一丸となって全力を尽くしてまいります。

〇菅野委員

 ありがとうございます。都議会自民党では、オリンピック・パラリンピック大会の施設整備について、本委員会を初め定例会でも、会場の再検討や整備費縮減策について議論を重ね、着実に成果を得てきました。
 しかし、この間、ただいまの質疑で明らかになったように、慎重な検討を経たとはいいがたい情報発信が行われ、ともすれば大会準備に無用の混乱をもたらしかねないこととなったのは、まことに残念であります。
 今後も、施設整備費を含む大会の開催経費の縮減に向けた議論を積み重ねるとともに、会場施設が大会後も都民、国民に親しまれ、東京に新たなにぎわいと活気をもたらすものとなるよう、責任政党である都議会自民党としても積極的に取り組む決意であることを述べて、私の質問を終わります。


【都議会リポート】

https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/olympic-propulsion/19-43.html