平成25年 経済・港湾委員会(10月22日)

経済港湾委員会
平成二十五年十月二十二日(火曜日)
第八委員会室

平成25年10月22日、経済・港湾委員会にて、中小企業の海外展開支援、雇用・職能開発、障害者の雇用対策、MICE誘致について質問いたしました。


■中小企業の海外展開に対する支援について

1.都が行っている支援の内容と実績、今後の取り組みについて

〇菅野委員

 まず初めに、中小企業の海外展開に対する支援について幾つか伺います。
 近年、アジアなどの新興国市場に挑戦する中小企業が目立つようになりました。私の地元、港区のあるメーカーも昨年、タイに販売会社を設立したそうです。今後の世界経済を牽引するといわれる新興国市場は、独自の技術や強みを持つ中小企業にとって大きなチャンスを秘めた地域です。
 しかし、頻繁に変わる現地の法制度や独自の商習慣への対応など、中小企業がビジネスを展開するにはハードルが多い上、外国企業などとの厳しい競争も待ち受けています。都内の中小企業がすぐれた商品や技術を武器に、アジアという、困難ではあるが可能性に満ちたマーケットにチャレンジする際、その取り組みを支援することは大変重要であると思います。
 そこで、都が現在行っている支援の内容と実績、今後の取り組みについて伺います。

○十河商工部長

 都は、平成二十二年度から、海外販路開拓支援事業を開始し、主にアジア地域への海外展開を目指す都内の中小企業に対しまして、商社OBによるアドバイスや現地企業とのマッチングなどの支援を実施しております。
 今年度からは、新たに貿易アドバイザーと技術アドバイザーを配置して、法制度や技術上の課題に対する専門的なアドバイスも開始いたしました。
 支援対象となる製品の数は年々増加しておりまして、平成二十二年度末の五十四件から、本年九月末には百五十九件となっております。また、制度開始以来、七十件の取引が成立しており、このうち六十四件はアジア諸国における取引となっております。
 今後、アジア市場を目指す中小企業のさらなる増加が予想される中、都としても、企業の販売戦略やニーズに応じて、より的確な現地情報の提供ときめ細かな支援を実施できるよう、具体的な検討を行ってまいります。

〇菅野委員

 都内の中小企業が世界を相手に勝ち抜いていくことができるように、海外販路開拓支援のさらなる充実、強化を強く要望しておきます。

2.国ごとに異なるさまざまな製品規格や基準に適合させるための助成について

〇菅野委員

 次に、さきの経済・港湾委員会においても議論いたしましたが、中小企業の海外展開を阻む大きな壁の一つに、各国の規制への対応があります。国ごとに異なるさまざまな製品規格や基準を満たさなければ、競争に勝つことはおろか、製品を流通させることもできません。しかも、その規格書は内容が複雑で、改訂も頻繁に行われ、制度に精通した人材でないと、どの基準が適用されるのか区分さえわからないといいます。
 このような課題に対して、さきの委員会では、産業技術研究センター内に広域首都圏輸出製品技術支援センターを開設し、相談員による情報提供を行っているとのお話がありました。
 また、規格に適合させるための改良や試験などの費用の負担も大きな課題です。欧州の企業から引き合いが来たある中小企業は、輸出のためにこれらの必要経費を見積もったところ、数百万円もかかるとのことでした。こうした費用面の課題についても、今年度、中小企業振興公社において助成制度を開始したと聞いております。
 そこで、これらの取り組みの具体的な実績と、今後の展開について伺います。

○十河商工部長

 海外の各種規制への適合を図る中小企業を支援するため、広域首都圏輸出製品技術支援センターでは、現在十六名の専門相談員を配置し相談に対応しておりまして、その実績は昨年度の約三百件に対し、今年度は九月末で既に五百件を超えております。
 さらに、規格適合に係る費用の負担を軽減するため、中小企業振興公社におきまして、製品改良や認証取得などの経費の二分の一について、五百万円を限度に助成する海外展開技術支援助成事業を今年度より開始いたしまして、七十件を超える申請を受け付け、そのうち二十九社の支援を行っているところでございます。
 今後は、アジア地域での企画に関する相談がふえていることを踏まえ、そのための体制強化に取り組むなど、中小企業の海外展開を技術面から的確に支援してまいります。

〇菅野委員

 各国の規制というのは、やはり刻々と変化しているようですので、その時々の企業ニーズに対応できるよう、引き続き的確な支援をお願いしておきます。

3.海外展開を図る中小企業の知的財産の保護活用

〇菅野委員

 また、海外展開においては知的財産の保護、活用も非常に重要なテーマです。すぐれた中小企業の製品がアジア新興国を中心として模倣被害に遭う例は後を絶ちません。現地の展示会でカタログを配布しただけで、すぐに模倣品が販売されたとの事例も聞いております。
 こうしたトラブルに対しては早期に適切な対応をとることが重要となりますが、中小企業の多くは、法務部門や知財部門などの専門部署がなく、対応のノウハウがないのが実情ではないかと思います。都が設置する知的財産総合センターによる適切なサポートが重要となってきますが、サポートに当たっては、専門家による助言はもとより、模倣の手口も巧妙、複雑となる中にあっては、現地での監視機能も不可欠となってくるものと考えます。
 また、海外でのさまざまな知的財産権の取得を行いやすくするよう、助成制度を充実することも重要です。
 そこで、海外展開を図る中小企業の知的財産の保護活用に向けて、どのような支援に取り組んでいるのか伺います。

○十河商工部長

 知的財産総合センターでは、中小企業の海外展開が活発化していることを踏まえ、今年度、さらに支援の充実を図ったところでございます。
 まず、模倣被害などのトラブルに迅速に対応できるよう、アジア新興国の特許事務所と連携し、企業からの要請に応じて現地で侵害状況を調査したり、報告書の発送などを行う仕組みを整備することとし、来月には北京の特許事務所と協定を締結し業務を開始する予定であります。
 また、特許より取得が簡便な実用新案権をいち早く取得し、権利侵害などに対抗できるよう、実用新案出願に係る経費の二分の一について六十万円を限度に助成するメニューを開始し、六件の支援を実施しております。
 さらに、国際的に広く通用する特許等を持つ中小企業を対象に、複数の国での権利の取得などに要する経費の二分の一について、一千万円を限度に三カ年にわたり助成する制度も立ち上げ、来月に支援を開始いたします。
 こうした取り組みを総合的に展開し、海外展開を図る中小企業の知的財産の保護、活用を的確に支援してまいります。

〇菅野委員

 中小企業が海外市場でその力を存分に発揮できるよう、引き続き、きめ細やかな支援を展開していくことを要望し、次の質問に移ります。

■中小企業における優秀な人材の確保と活躍できる雇用環境の整備について

1.課題解決型雇用環境整備事業の進捗について

〇菅野委員

 中小企業が厳しい競争を勝ち抜き成長していくためには、優秀な人材を確保し活躍できる雇用環境を整えることが必要です。しかし、思うように若者を採用できない、採用してもすぐにやめてしまうなど、人材面で悩む企業が多く見られます。優秀な人材を確保し定着させるには、効果的な採用活動を行うとともに、雇用環境の整備を進めていく必要があります。しかし、中小企業にはどのような方策を講じればよいかといったノウハウが不足しており、中小企業が単独で取り組むことは難しい場合が多いのが実情です。
 また、こうした悩みを業界共通の課題として抱えている場合も多いと聞いています。さきの第一回定例会予算特別委員会での我が党の質問に対し、都からは、こうした企業、業界の悩みを解決するため、今年度から新たに課題解決型雇用環境整備事業を開始するとの答弁がありました。
 この事業の進捗状況について伺います。

○矢田部雇用就業部長

 課題解決型雇用環境整備事業は、若者が働きやすい雇用環境を整備し、人材の確保、定着を支援することを目的としており、業界団体や企業のグループに対し、一千二百万円を上限に、最大二年間、必要な経費を助成する事業であります。今年度は五月から提案公募し、審査の結果、四つの団体等を選定いたしました。
 例えば、広告業界で多様なライフスタイルに対応するため、在宅勤務を進める取り組みや、IT業界で採用PR力の強化や、若手社員の教育体制の整備に係る取り組みなどが支援対象となっております。現在、提案のあった取り組み内容をより効果的なものとするため、団体に対し専門家を派遣してコンサルティングを行っております。
 都としてこうした取り組みを支援するとともに、事業の成果を広く発信し、波及させてまいります。

〇菅野委員

 今後、団体において着実にその取り組みが実施され、行く行くは業界におけるプロトタイプとなるように、引き続き支援していくことを要望しておきます。

2.都の職業能力開発に対するとりくみにについて

〇菅野委員

 まさに企業においては、人材こそが最大の経営資源であり競争力の源泉であります。東京の産業を支える中小企業の人材を確保するためには、地域の産業の特色を踏まえながら、産業構造の変化に対応した職業訓練を行い、求められる人材をしっかりと育て上げていくことが大切であると考えます。
 都は、各地の職業能力開発センターにおいて職業訓練を実施しておりますが、先日、私は品川にあります城南職業能力開発センターを視察し、詳しい説明を伺ってまいりました。
 同センターでは、建築系科目など地域の産業に寄与する訓練や、これからの高齢社会に確実に対応する介護サービスの訓練が印象的でした。こうした長年培ってきた訓練指導のノウハウや、すぐれた施設を十分に生かしながら、東京都が責任を持って直営で職業能力開発を実施することは極めて重要であると実感した次第です。
 職業能力開発の成果が、中小企業の中で十分に生かされるよう、都としてどのような考え方で取り組んでいくのか見解を伺います。

○戸澤事業推進担当部長

 都では、求職者の早期就業の促進と産業の基盤技術、技能を支える人材の育成のため、多様な訓練科目を設定し、都内十四カ所の職業能力開発センター等において、ものづくり系の科目を中心に五千名の規模で公共職業訓練を実施しております。
 職業能力開発の成果を中小企業に反映させていくためには、地域の産業ニーズに応える人材を育成し、中小企業への就職に結びつけていくことが重要でございます。
 このため、都内四ブロックの各センターに、業界団体や行政機関などを構成員とする職業能力開発連絡協議会を設置し、地域の求人ニーズ等を把握し、訓練科目の新設や訓練内容の見直しを進めております。
 例えば、再生可能エネルギーの普及に応えるため、太陽光発電にかかわる内容を訓練に取り入れ、さらに、今年度は環境対応型の冷暖房設備であるエコキュートを導入するなど、訓練内容の充実を図っております。
 今後とも社会経済環境の変化を踏まえつつ、地域の産業人材を的確に育成していくため、職業訓練の一層の充実を図ってまいります。

〇菅野委員

 職業能力開発センターは、人材育成のための重要な拠点として、これからも力を発揮してほしいと願っています。そのためには、運営の基礎となる人員体制や設備の充実に十分に意を用いていくべきことを改めて申し上げておきます。

3.中小企業の職業訓練に対する助成について

〇菅野委員

 企業は採用した人材をしっかりと育成していかなければなりません。従業員が持てる能力を十分に発揮し、さらに能力向上していくことが中小企業発展の鍵を握っています。そのためには現場に即した従業員教育が重要となっています。しかし、中小企業では指導者の確保や経費的な問題もあり、思うように従業員教育ができないとの声も上がっています。
 これに対し、都では今年度より中小企業の職業訓練に対する助成を開始したと聞いており、特に従来の国の制度と異なり、小規模な企業も利用しやすい仕組みとするなど工夫を凝らしたと聞いておりますが、現在の取り組み状況について伺います。

○戸澤事業推進担当部長

 従業員の能力向上は、企業みずからが行うべきものでありますが、中小企業では、ノウハウや資金の面で制約があり、みずから実施することが困難な場合が多くございます。
 そこで、都では職業能力開発センターにおいて、在職者向けの多様な職業訓練のほか、個別企業の要望に応えるオーダーメード訓練を行うとともに、企業現場へ指導者を派遣する現場訓練支援事業を実施するなど、中小企業の従業員教育への支援を行ってまいりました。
 さらに今年度、中小零細企業の実態を踏まえた中小企業職業訓練助成制度を新設したところでございます。これは、国の制度では対象とならない小規模、短時間の訓練や、教育訓練機関へ派遣して実施する訓練も対象とするなど、中小企業の実情を踏まえた支援制度でございます。
 実施状況でありますが、今年度下半期に実施する訓練についての申請期間は先月で終了しており、事業を開始した六月以降の訓練に対する申請数は百九社六百八十コースとなっております。
 中小零細企業からは、申請期間には間に合わなかったが、年度末に向けて従業員教育を行いたいので助成金を利用したいとの声が多く寄せられていることから、今後、追加募集を行うなどニーズに適切に対応してまいります。

〇菅野委員

 新たな制度がこれから中小企業で十分に活用され、企業において人材育成が一層取り組まれるようになることを期待して、次の質問に移ります。

■障害者の雇用対策について

1.東京の障害者の雇用者数、就職者数の状況について

〇菅野委員

 障害者の雇用対策について伺います。
 ことし四月から、民間企業の法定雇用率が一・八%から二%へと引き上げられました。障害者雇用を取り巻く環境が変化する中で、まず、東京の障害者の雇用者数、就職者数の状況について、最近の特徴的な点もあわせてお伺いしたいと思います。

○矢田部雇用就業部長

 都内企業に雇用されている障害者数は、九年連続で過去最高を更新し、平成二十四年六月一日現在で、前年比四・四%増加の約十四万一千人となっております。
 また、平成二十四年度の都内ハローワークにおける就職件数は、前年度に比べ一二・〇%増の五千百六十一件となり、初めて五千件を超えております。障害種別で見ると、精神障害者の方の雇用者数が前年比二五・八%増、就職件数が前年度比二一・七%増と、いずれも大きく伸びているのが最近の特徴でございます。

〇菅野委員

 ただいまのご答弁のように、都内企業での障害者雇用は着実に進展してきており、とりわけ精神障害者の雇用者数、就職者数の伸びが顕著です。

2.精神障害者の雇用に取り組む中小企業に対する支援について

〇菅野委員

 国でも、精神障害者の方のさらなる雇用の促進を図る観点から、ことし六月には、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えることなどを内容とする障害者雇用促進法の改正が行われました。
 しかし、精神障害者は身体障害者とも知的障害者とも異なる障害の特性を持っており、受け入れて戸惑う職場も少なくありません。このため、今後は精神障害者を雇用しようとする中小企業への支援を強化すべきと考えます。
 さきの第三回定例会で、我が党の大場やすのぶ議員が、障害者雇用を促進するための中小企業への支援について質問したのに対し、都では、個々の企業ニーズに合わせて支援するモデル事業を実施しているとの答弁がありました。
 精神障害者の雇用管理についてのノウハウがないため、不安を抱える中小企業に対しては、採用前の準備段階から採用後の定着支援まで一貫して支援するという、この事業の手法を活用することが有効であると考えます。
 現在実施しているこの事業をさらに発展させ、精神障害者の雇用に取り組む中小企業に対する、きめ細やかな支援を実施していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○矢田部雇用就業部長

 都では、平成二十三年度から三年間のモデル事業として、採用前の環境整備から採用後の定着まで一貫した支援を実施しております。
 事業開始から現在までで四十四社に対して支援を実施し、二十四社、三十三人の採用に結びついております。障害種別で見ると、身体障害者が四人、知的障害者が十人、精神障害者が十九人であり、精神障害者が半数以上となっております。このことから、モデル事業で行った支援は、特に精神障害者を雇用する中小企業のニーズに合致していることが明らかとなりました。
 このモデル事業は今年度で終了予定でありますが、本事業を通じて蓄積した精神障害者の特性を踏まえた支援ノウハウを生かして、雇用管理に対する助言機能を強化するなど、精神障害者の雇用を進めるための企業現場の一貫した支援策として、新たな仕組みを検討してまいります。

■観光振興について

1.MICEの開催について

〇菅野委員

 最後に、観光振興について伺います。
 このたび国際水協会世界会議、国際栄養学会議の東京開催が決定するなど、うれしいニュースが立て続けにありました。国際会議の開催は一度に多くの外国人の訪問が見込める上に、海外からの注目度も高いことから、開催都市には大きな経済波及効果や国際的な地位の向上が期待できるものです。
 都は、国際会議の誘致に向けて、誘致活動費や開催経費の負担を軽減する財政面での支援を行っていますが、東京の国際会議誘致、開催支援の取り組み状況と効果を伺いたいと思います。

○杉崎観光部長

 都内における国際会議や展示会など、MICEの開催は多くの外国人に対して東京の魅力を集中的にPRできる機会であり、都市としての存在感を高め、東京の国際的な地位向上につながるものであります。
 さらに、宿泊や会議施設だけでなく、飲食、ショッピングなど、幅広い観光関連分野に経済波及効果をもたらすものでございます。
 国際会議の都市別開催件数を見てみますと、東京は平成十九年の世界第十一位から、平成二十四年は世界第六位へと順調に順位を上げております。都は、この動きをさらに進めるため、今年度から国際会議の誘致活動を行う国内の誘致組織に対し、広報宣伝などの誘致活動費をこれまでの単年度から複数年度にわたる助成を可能とするとともに、開催経費の助成限度額を一千万円から二千万円に引き上げるなど、支援の拡充を図りました。
 また、新たに会議参加者が東京の魅力やおもてなしの心を体感できるよう、伝統文化体験プログラムや都内観光ツアー等を提供する制度を創設いたしました。
 こうした国際会議の誘致、開催を支援する事業の活用により、お話の大規模な国際会議の誘致に成功しております。
 今後も、MICE誘致を効果的に支援する戦略的な取り組みを検討してまいります。

〇菅野委員

 オリンピック・パラリンピックの開催都市決定を契機に、東京はこれまで以上に世界の注目を浴びることから、この機を逃さずにMICEの誘致促進を図っていくことが必要です。
 国際会議の誘致を中心としたこれまでの取り組みも大事ですが、これからは企業系の会議や報奨旅行の誘致等、より幅広く取り組むべきと要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。


【都議会リポート】

https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/economic-port-and-harbor/2013-11.html